ダムと六文銭♯12012/08/06 14:22:48

毎年恒例、夏の家族旅行である。昨年は神戸大阪という街歩き。一昨年は福井小浜への海水浴。であるからして、今年は山がよかろうということで長野を目指す。
旅行計画を立てる頃、自分たちのまわりで黒部ダムへ行ったという話をよく聞いた。義弟の家族も6月に行ったそうだし、テレビを何気なく見ていると「立山黒部アルペンルート」の旅番組をやっていたり。妻は2度ほど、行ったことがあるのだが、オイラは未体験。まあ、ダムなんて小さい頃から宇治の天ヶ瀬ダムや南山城村の高山ダムへ何度も行っているので、そう珍しくもないが、標高1500m級の黒部なら涼しかろうと行き先を決める。
まずは長野道、豊科I.C.で降りる。休憩がてら安曇野市の大王わさび農場へ。子どもたちに「大王」とは何の大王なのかと聞かれる。さあ、ニコちゃん大王だろうか?恐怖の大王だろうか? 実際は敷地内に安曇野に伝わる伝説の「八面大王」を祀る神社があることからの命名らしい。八面大王様は坂上田村麻呂に討伐されたとか、されないとか。
15年ほど前に来た時とは違って、おみやげ館などがキレイに整備されている。しかし、黒澤明監督の「夢」で撮影された美しい小川沿いの水車小屋では、でかいゴムボートに観光客を乗せるアトラクションをやっていて、せっかくの美観が台無し。行き交う観光客の中からも「台無し〜」の声、しきり。
丁度、小腹も空いてきたので売店にて、わさびソフトクリーム、わさびウインナー、わさびコロッケ、わさびチキン、わさびサラミなどを購入して食べる。わさびソフトクリームは子どもに不評だったが、あとは旨い旨いと食べる。わさび味はあまりしなかったなあ。ところが、ここでわさびづくしを食べたことで、後に息子を悲劇が襲うのであった。To be continued
大王わさび農場にて

ダムと六文銭♯22012/08/07 00:31:15

さて、信濃大町である。黒部ダム、長野県側ルートの起点であり、北アルプス登山の玄関口。JR大糸線の信濃大町駅にクルマを停め、駅前を歩く。
さすがはアルプスの見える街。駅前にはリュックを背負った登山客が… ん?リュックは背負っているが登山客っぽくない人が多数。登山と言うよりオタクな感じ。ふと見ると、駅前のロータリーにはボディに萌えキャラが描かれたマイクロバスが。リュックを背負ったみなさんはそのバスに吸い込まれていく。
アニメ好きの娘が、「なんかアニメのイベントツアーじゃないの?なんのアニメか聞いてみて」と言う。オレが聞くのかよ!近寄りがたい雰囲気プンプンなので、バスのフロントにあった「おねがい☆ティーチャー10周年 おねがい☆聖地を行く!巡礼バスツアー」の文字を頼りにiPhoneで調べてみる。なんと!信濃大町周辺は萌えキャラアニメの舞台地となっていて、ファンイベントを開催中らしい。
なるほどねえ。しかし、おねがいされても我々はティーチャーでもなければツインズ(続編らしい)でもないので、ツアーのみなさんの無事を祈りつつ、その場を離れる。
空気は澄んで乾燥している。時折吹く風は爽やかだ。しかし、日差しはジリジリと照りつける。そんなこんなで、信濃大町はいろいろな意味でアツイ街であった。
我々は駅前を離れ、歩き始める。目的の場所まで、あと少しだ。
To be continued.
信濃大町駅

ダムと六文銭♯32012/08/07 21:37:41

我々が目指したのは、大町駅から300mほど西の食事処。いや、特にその店でなければ、ということではない。信濃大町のご当地グルメ「黒部ダムカレー」を食べたかったのだ。
近頃のB級グルメブームに触発されたか、ここ大町でも20軒近くのお店で、それぞれに趣向を凝らしたカレーが食べられる。しかも、黒部ダムをイメージした盛りつけで。
大町駅の観光案内所でもらった黒部ダムカレーのパンフレットに載っていた、お店とカレーの写真から息子に選ばせたのが、その店だったのだ。
熱心なYAJIKITA/NETのファンなら息子が食いしん坊であることはご存じだろう。彼は出発前から「黒部ダムカレー」を楽しみにしていた。しかも、彼はカレーを食べる時には、つねにカレーと闘う姿勢で臨んでいる。今日も対戦を楽しみにしていた。
ところが、せっかくやってきた店は休業日。土曜が休業!そんなことがあるのか!怒るオイラに妻が、「あっ!ごめん。ガイドブックに土曜定休日って書いてあったわ」。こら、先に気づけよ!大町駅からわずか300mとは言え、灼熱の太陽の中を歩いてきた我々は落胆し、すごすごと駅へと戻る。仕方がない、駅前にあった別の店に入ろう。
ところが、である。次の店は駅前という好立地、お昼時ということもあって満席。表のベンチでしばらく待つように言われた。何が嫌いって、外食の店で待たされることほど嫌いなものがない我々は別の店へと移動。
ジリジリと照りつける日差しの中、大町の商店街を行く。幸いにも「大王わさび農場」でわさびづくしを食べていたので、それほど空腹ではない。と言うか、腹は積極的には減っていない。だが、ここで「黒部ダムカレー」を食べないと、食べるチャンスがなくなってしまう。ガイドブックを見ながら、細い路地を入り一軒の店にたどりついた。もう汗だくで、暑さのために、めまいすら感じていた。ガラガラと店の扉を開く。
To be continued.
信濃大町のゆるキャラ

ダムと六文銭♯42012/08/08 20:34:17

黒部ダムカレーは、洋食屋、中華屋、うどん屋、居酒屋…いろいろなお店で提供している。我々が選んだのは本業がうどん屋。もちろん注文は「黒部ダムカレー」。しかし娘は暑さで食欲がないと言い、冷やしうどんを頼む。
おばちゃんが「ご飯、多いけどどうする?」と聞いてきた。カレーごとき当然ペロッといけるが、聞き方が真剣なのと、それほど空腹を感じていなかったので、息子も妻もオイラも「じゃあ、ご飯少なめで」と答えた。
と なりの席には、近所で建築工事でもやっているのか、ガタイのいいお兄さん方。テーブルには大きなトレイに大きな皿が載っている。ひょっとして、あれが「黒 部ダムカレー」?いやいや、食欲旺盛そうなみなさんだから大盛りでしょう?などとぼんやり考えていると、「はい、お待ちどうさま」とトレイがドーンと置か れる。3つ置いたトレイはテーブルからかなりはみ出している。
皿がでかい。カレーがたっぷり。大きな串カツ。少なめのはずのご飯が多い。野菜サラダの上に豚しゃぶも載っている。おまけに、あろうことか別鉢で暖かいうどんまである。こりゃ、多いわ。ご飯普通だったらと思うと冷や汗。
「いただきまーす!」と元気にぱくつく息子。味は、想像していたうどん屋のカレーと違い、スパイシーな本格派。旨い!だが辛い!串カツも大きい!豚しゃぶも多い!サラダのドレッシングが絶妙!
しかし、5口ぐらい食べたところで、息子が「ダメだ!」とスプーンを置く。まず辛さ、そして串カツのタマネギが苦手、それに豚しゃぶのボリューム、さらに暑さからくる疲れ、わさびづくしの食べ過ぎ、それらが合わさって、もう食べられないと。
「負けだ…」。今回のカレーとの闘い、自分の負けを潔く認める息子。「完敗だ…」。そこはかとない爽やかさすら感じる発言。辛さにやられた舌をいたわるように、姉の冷やしうどんを少しもらう息子。
オ イラも妻もカレーを完食するので精一杯。申し訳ないが、うどんは2、3本と汁を啜っただけで終わる。もちろん、うどんも美味しかった。そんな我らをよそ に、娘は涼やかに冷やしうどんという勝ち組。お店の人に、残して申し訳ないと詫びを言い出る。侮れない、黒部ダムカレー。たかがカレーと油断したのが敗因 だった。次回チャンスがあれば、しっかりと準備をしてリベンジしたいと思った。
To be continued.
黒部ダムカレーの一部

ダムと六文銭♯52012/08/09 18:41:03

黒部ダムは標高約1,500m、長野・富山県境の後立山連峰を貫く関電トンネルを抜けて行く。映画「黒部の太陽」やNHK「プロジェクトX」で有名なトンネルだ。昭和30年代前半の建設工事中、破砕帯と呼ばれる崩れやすい土壌にぶち当たり、崩落や出水の苦難を乗り越えて開通したことで知られる。
信濃大町から黒部ダムへのルートは、このトンネルを走行するトロリーバスの扇沢駅が起点になる。電車のように架線から電気をとって走るこのバスは、30分ごとの出発だ。
我々が扇沢駅に到着したのは13:22。次の13:30発まで8分。乗車券は時刻指定で購入する。ベストなタイミングだ。しかし、ここで息子が「トイレ!」と言い出し、少し離れたトイレへと駆けていった。7分、6分、5分。なかなか息子は帰ってこない。小ではなく、大だったのか?出発に間に合うのか?4分を切った頃、息子の姿が見える。「走れー!」と大声で呼んで、バスへとみんなで駆け込む。ちょっとドキドキだったね。
バスの中で息子に「お腹でも痛くて大に行ったの?」と聞くが、否定し、明るい声で「トイレを出たところに売店があって、そこでお土産の試食をしてたの」と答える。なんじゃそりゃー!カレーの敵を、こんなところでとっていたのか。
トロリーバスはゆっくりと走り出し、全長5.4kmの真っ黒なトンネルの中へ。壁面に印された約80mある破砕帯の場所もあっという間に過ぎる。工事ではここを越えるのに7ヵ月を要したそうだ。15分あまりの乗車でトロリーバスは、黒部ダム駅に着いた。
To be continued.
黒部ダム駅から220段の階段を上って展望台へ