秋深し 隣は何を する人ぞ2011/11/17 00:00:53

地下鉄のホームで電車を待っていた。隣にはひとりの老人。うちの親父より、少し年上だろうか。背中にはリュック。何やらメモを取り出して書き込んでいる。見るともなしに書き込んだ言葉が見える。「バナナ」「豚」。ほう、買い物のメモだろうか。そういえばうちの親父も、お袋の足腰が弱って動けないためリュックを背に買い物に行っている。大変だろうなと思っていると、その老人がメモをこちらに見せて何か言っている。
この時、オイラは耳にカナル型のイヤホーンを突っ込んでいたため老人の言葉が聞こえなかった。ひょっとすると筆談の必要な方なのかもしれないと思い、慌ててイヤホーンを耳から引っこ抜く。老人はメモをこちらに見せながら言う。「こんな句ができました」 はあ? 句? メモを見ると「神渡る 秋の海ゆく 海豚島」と書いてある。海豚島? 頭の中がQuestion markだらけだ。老人は喋る。「さっき、そこにポスターがあって、それで」 何がそれで、で、いったいこれは何なのだ。ここでオイラはハタと気づいた。ああ俳句かあ、と。
なんだかよくわからないが、とりあえず老人が得意げな顔をしているので、一応褒めておいた。「なるほど、素敵ですね。」と。すると老人、「いやいや、素敵かどうかは詠む人の感性によるから、何とも言えないね」と返す。老人はなおも話を続けようとする。なんだか馬鹿馬鹿しくなってオイラはイヤホーンを耳に突っ込んで無視した。それでも老人の口は電車がホームに入ってくるまで動いていた。
電車に乗り込み、老人とは離れ場所に座って、またまたハタと気づいた。ああ、最初のメモでチラッと見えた「豚」は海豚島(イルカ島=三重県鳥羽市の沖にある島で観光地)の「豚」だったんだ。すると、「バナナ」はどんな句の「バナナ」だったのだろう?

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