11月の読書2008/12/04 11:41:15

◎魔王/伊坂幸太郎/講談社文庫/(再読)
◎ひかりの剣/海堂尊/文藝春秋/☆☆
◎モダンタイムス/伊坂幸太郎/講談社/☆☆☆☆+
◎誘拐児/翔田寛/講談社/☆☆☆
◎サクリファイス/近藤史恵/新潮社/☆☆☆
◎シューカツ!/石田衣良/文藝春秋/☆☆
◎とんび/重松清/角川書店/☆☆☆☆

今月の目玉は伊坂幸太郎の『モダンタイムス』。
2005年に発表された『魔王』の続編的作品。
『魔王』は読んではいたが、当時は酷評していた。
http://yajikitanet.asablo.jp/blog/2005/12/21/184537
内容もほとんど忘れていた。『モダンタイムス』を読み始めて、
前作で書かれていたらしきことが語られているようなので
しばし中断して再読。なるほど、当時、放ったらかしたことが
ここに活かされているのね。
どちらから読んでもいいが、『魔王』を知っておいた方が
『モダンタイムス』という映像ドラマの中に
『魔王』が過去の出来事のように
フラッシュバックして現れる演出手法が味わえる。
今、ネット社会の中で陰謀史観というのがよく語られる。
奇妙な事件の陰にはCIAやマフィアや内閣調査局や
北朝鮮やフリーメーソンが暗躍しているというやつだ。
『モダンタイムス』では、社会を動かすのは大きな陰謀ではなく
目の前の小さなことであり、その小さなことが実は大きいのだと
ポジティブでもなくネガティブでもなく語られている。
社会や時代の騒々しい動きに惑わされることなく
今日を生きていきたいなと思う。
ここへきて、前作の『ゴールデンスランバー』といい
『モダンタイムス』といい、伊坂幸太郎は良い仕事をしている。

海堂尊の『ひかりの剣』。
チーム・バチスタシリーズ以外はあまりパッとしないなあ。
筆が早く多作だが内容は薄い。今回はかなり薄い。
今年の江戸川乱歩賞受賞の『誘拐児』。
あまりにもストーリーやトリックに偶然の要素が多すぎる。
「そんなわけあるかい!」の突っ込み満載。
冒頭、黒澤明監督の『天国と地獄』を彷彿させ
期待を抱かせるがそこまで。
過去、江戸川乱歩賞で面白かった小説は思い出せないので仕方ないか。
『サクリファイス』は今年の大藪春彦賞受賞作。
同賞は〈優れた物語世界の精神を継承する
新進気鋭の作家および作品に与えられる〉そうだが
その意味では、優れた物語世界の構築には成功している作品。
ただ、大藪春彦の名前からイメージされるハードボイルド小説や
冒険小説とはほど遠いので、なんとなく肩すかしを感じた。
『シューカツ!』は石田衣良のやっつけ仕事。
昔、就職指南や恋愛指南で一世を風靡した〈中谷彰宏〉を思い出した。
子どもを持つ親は『とんび』には泣くしかないだろう。

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