中村屋!2012/12/05 21:52:20


名古屋平成中村座
十八代目中村勘三郎死去のニュースに茫然である。歌舞伎のチケットは高額なもので、そう頻繁に観劇できたわけではないが、それでも勘三郎の舞台はどうしても観たいと思わせるものだった。DVDやテレビ中継でも勘三郎が出るとなると楽しみに観た。年下のオイラが言うのも妙なのだが、実に可愛げのある役者だった。
十八代目の襲名披露を名古屋御園座で観たのが平成17年10月。演目は「青砥稿花紅彩画」。少し甲高い調子で喋る弁天小僧菊之助の名台詞は今も印象深い。
また平成21年9月に名古屋城で観た平成中村座「隅田川続俤 法界坊」も忘れられない。江戸時代の芝居小屋の熱気も斯くや、そして現代のエンターテインメントとして十分に楽しめる舞台は見事だった。登場時の滑稽さから、悪へと変化し、怨霊の悲しみまで、その演技の幅と華やかさに、カーテンコールは小屋が揺れるほどの熱狂だった。
単に歌舞伎に留まらない役者として、野田秀樹や藤山直美との共演などは、演劇ファンとして実にワクワクさせられた。大河ドラマの「元禄繚乱」大石内蔵助役も大好きだった。オイラにとって「好きな」役者だったのだなと改めて思う。「上手い」役者や「観たい」役者や「いい」役者は色々いるけれど、「好きな」役者はと聞かれると、一番に思い浮かぶのが十八代目中村勘三郎だ。もう記録の中でしか観られないかと思うと、とてつもなく悲しい。一度でいいから勇気を出して「中村屋!」と掛け声をかけておけば良かった。