ネイキッド熱海殺人事件2021/09/11 06:48:06

つかこうへい事務所の最盛期に間に合わなかった世代として、それ以前に上演された初演版熱海殺人事件には正直興味がなかった。後年、つかこうへい自身によってケレン味たっぷりに改訂されていくこの作品。初演の戯曲を使って、初演した文学座が上演するという企画。とは言え、つかこうへい演出の残り香はあり、初演のママという訳ではなかったように思う。
しかし、つかの過剰な演出部分と役者のキャラクターで上積みされていた部分を取り除くことで、この戯曲の真の面白さと意味がわかったように思う。
戯曲熱海殺人事件の魅力は、不条理と毒、それを可能にする演劇的な入れ子構造だと思う。しかし、当時トレンドだった不条理演劇は、その後難解が過ぎて観客が離れ。毒という価値観は、ツービートを筆頭とするメジャー化で目新しさを失う。それ故に、その後のつか版熱海は、演劇的な入れ子構造を過剰なまでに発展させていくことで生き残りを図ったのではないかと思えた。
また、関西では特に80年代、学生演劇出身の劇団がつか版熱海を学生ノリの勢いのある演出で上演し、その影響もあって、いわゆる“つかの熱海”が定着していったように思う。
もうひとつ、役者のキャラクターの上積みについては、部長刑事役の風間杜夫から阿部寛などを経て、近年は婦人警官役にアイドルグループ出身者を起用するなど、その系譜は続いているが、今回の文学座版の婦人警官役のキャスティングは、この役の真の重要性を認識させてくれた。
やはり、熱海殺人事件は面白い。優れた作品の魅力を改めて掘り起こしてくれた今回の文学座版は熱海殺人事件の歴史やうんちくを知らなくても、芝居として楽しめる良質な作品だった。
atami

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